Horstの提示するクライミング上達のための9原則

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Eric J. Horstが著書 "How to climb 5.12" で提唱している、クライミング上達のための9原則を紹介します。なお、フィットネス・トレーニングと書いてあるものは、フィジカルを鍛えるトレーニング全般のことです。

  1. クライミングスキルを向上させるにはクライミングをするのが最適である。
    例えスラックラインのようにバランス能力が必要な運動であっても、他のスポーツをしてクライミングのスキルが上達することはありません。一般的なフィットネスの向上は多少貢献するかもしれませんが、クライミングが可能であればクライミングをするのがベストです。
  2. クライミングスキルは(経験のある)岩の種類や角度、フリクションの性質に限定的である。
    例えば人工壁では登れても外岩では登れなかったり、スラブではすごくてもオーバーハングではそこそこしか登れなかったりするように、クライミングの動作は岩の種類や角度、フリクションの違いの影響を強く受けます。従って、様々なタイプの岩壁を経験することが大切です。
  3. フィットネス・トレーニングよりもスキル練習の方が費用対効果は高い。例外は一流クライマーのみ。
    筋力トレーニングなどで得られるクライミングの強さよりも、クライミングスキルの方が上達しやすいので、時間が限られているのであればフィットネス・トレーニングよりも実際にクライミングをすることを優先する方が、より賢いと言えます(3対1の割合でスキルの練習を優先しましょう)。ただし、一流クライマーはすでにテクニカルスキルもメンタルスキルも十分に備わっているので、最大筋力や筋持久力のトレーニングが不可欠です(だいたい1対1程度の割合が理想的です)。
  4. 初級クライマーにとっては、一般的なコンディショニング・トレーニングが、最も有効なフィットネス・トレーニングである。
    もし時間に余裕のある初級クライマーが補助的にフィットネス・トレーニングを行いたい場合、総合的かつ適度に鍛えるべきで、筋骨隆々のボディビルダーや痩せ細った長距離ランナーを目指すべきではありません。不必要な体脂肪や、不必要な筋肉量を最小限に保つことが目標です。そのためには、軽いランニングのような有酸素運動で体脂肪や余分な脚の筋肉を落としたり、筋肉が足りなければ適度なフリーウェイトの筋トレを週に2〜3度行ったりするのが良いでしょう。この段階では、指の強さを鍛えるためのフィンガーボードやキャンパスボードなど、クライミングに特化したトレーニングは避けるべきです。
  5. 中上級クライマーにとっては、クライミングに特化したコンディショニング・トレーニングが、最も有効なフィットネス・トレーニングである。
    もちろん、テクニックだけではダメで、強さが必要なルートもあります。5.10が問題無く登れ、総合的な運動能力やテクニックが備わっているのであれば、クライミングに特化した最大筋力トレーニングを付け加えるべきです。その際には、「あなたにとっての弱点」を克服するための理に適った最大筋力トレーニングを行いましょう。
  6. 最大筋力トレーニングで持久力は向上するが、筋持久力トレーニングで最大筋力は向上しない。
    クライミングに特化したフィットネス・トレーニングにおいては、(特に上腕・前腕の)最大筋力の向上を再優先するべきです。最大限の力を発揮しなければならない核心をこなせるようになるだけではなく、負荷の低いムーブにおいても必要な力の割合が低下するので、持久力が向上することにもなるからです。逆に、筋持久力トレーニングで最大筋力を向上させることは、残念ながら1パーセントもありません。週に2度ほどクライミングをすれば、持久力は自然とついていきます。
  7. 浪費したエネルギーと時間は戻ってこない。
    実質的な役割において、筋力と持久力の向上への一番の近道はクライミング時に無駄に消耗しているエネルギーを減らすことです。クライミングのスキル(テクニックと作戦)が肝心です。ムーブが遅すぎたり、強く掴み過ぎたり、下手な体のポジショニングをしたり、ホールドを見過ごしたりすると、必要な量よりも多くのエネルギーを無駄遣いしてしまいます。そのためには、メンタルスキルも大切です。
  8. 想像が及ばないところまで、体はついていかない。
    どんなスポーツでも、一流のアスリートはパフォーマンスアップのためにビジュアライゼーションを活用します。頭の中で成功しているところを想像することで、本当に成功することに繋がります。ビジュアライゼーションはより現実的で、より詳細で、よりポジティブであるほど有効です。ネガティブな想像や失敗への不安は逆効果です。クライミングで課題を登る前、新しいムーブを練習するときやコンペティションではもちろん、日頃から、人前でのスピーチであったり、重要な仕事や問題に取り組む前にビジュアライゼーションを練習しましょう。
  9. トレーニングやクライミングは刺激にはなるが、それ自体は筋肉を成長させない。再合成や強化は、睡眠時や休息時にのみ生じる。
    筋肉の強化や、新しいムーブへの神経系の適応は、レストしているときに起こるのであって、運動しているときではありません。クライミングやトレーニングは成長する刺激にはありますが、それ自体はカタボリックである、つまり体の組織を解体します。従って、回復のための時間の質と量が、クライミングやトレーニングのための時間と同じくらい重要なのです。超回復を促すために食事は最低一日3回しっかり摂り、毎晩8時間は眠り、1〜3日のレスト日が必要です。トレーニングの強度を上げた場合には、レスト時間も増やすようにしましょう。

これらの原則に照らして、各自の現在のパフォーマンスレベルや弱点に合わせて、クライミングやトレーニング、レストのスケジュールを実際に計画して実行していくことが大切だと思います。